暴力があからさまだった時代の素描を見ながら、今僕らが生きる世界もなんら変わっていないと呟くことは、本質的に映画的な行為である。
江戸中期と現在をいとも容易に横断してみせた山崎樹一郎の<至極真っ当な時代劇>は、なぜネットよりも映画が有効なのか、今の暗い時代に鈍い光を放っており、思わぬ涙を誘う。

≪舩橋淳(映画作家)≫

 

そもそも時間とは過去から現在、そして未来に一定の方向で同じ速度で流れているとは限らない。過去とは過ぎ去ってしまったものではなく、何度も救済し生き返らせることができる。また、未来は未だ起きて形がないものではなく、我々は未来から影響を受けているのかもしれない。時間は全てパラレルに流れているのだ。
≪ヴィヴィアン佐藤(非建築家、美術家、ドラァグクイーン)≫

この監督、
観客に媚びない。すっぴんで、
観客と対峙している。
そのことが、
めくるめくラストで、明らかになるのだ。
≪かわなかのぶひろ(映像作家)≫

やっぱり風穴だ。風穴を空けなきゃならない。
やむにやまれぬ思いからこの映画が作られて来たことがビンビン伝わってくる。
『新しき民』と呼ばれる映画、それこそが一揆なのだ。
≪瀬々敬久(映画監督)≫

黒澤明監督の名作『七人の侍』を思い起こさせながらも、本作はこれまでの時代劇とは異なる方向へと進む。鳴きわめくポップジャズのスコア、ヌード描写、アニメーションといった様々な要素を盛り込みながら、山崎樹一郎監督は、この伝統的なジャンルが持つ慣例と遊んでいるかのようだ。
≪ニューヨークタイムズ≫
 

三里塚の昭和男児は、闘争で死んだ親友の霊を、自分の信念を貫かせる重石としたが、300年前の治兵衛にとって万蔵は、山中という土地を活性化させ、新しい民を生みだす回転ステージの動力源だった。万蔵の理が教えてくれる。象のかぶり物で演技するのも盆踊りの舞いも奉納芸能であるように、矛盾を抱え人生を 生きることは、豊作と家内安全を祈る奉納相撲なのだ、と。そして江戸時代と現代をつなぐこの壮大な映画も、まるで天下に捧げる悠久の絵巻物のようではないか。(一部抜粋)
≪藤岡朝子(映画祭コーディネーター/アドバイザー)≫

 


逃走する主人公はカッコ悪い。しかし、山崎監督はそのカッコ悪い姿にこそ未来を見る。僕が受け止めたのは、たとえ逃走しカッコ悪くても生き延びよ、というメッセージだ。(一部抜粋) 
≪本田孝義(映画監督)≫

 


この焼け野原のような日本映画界の中で、既存の製作・上映システムを盲信しないオルタナティブな映画運動体としての『新しき民』の姿勢は、そのまんま、何かを変えようと叫び声を上げた山中の民と重なるようだ。日本映画は今、大きな転換期にある。(一部抜粋) 
≪深田晃司(映画監督)≫

「今のこの時代に一筋の光を射す映画だった様に思います。大切なモノの為に、未来ある全ての為に、新しき民が残した功績に脱帽です」(30歳 男性)

「悲しい歴史があったことを改めてはっきりと認識できたと思います。と、同時に、仁義とか正義とかいろいろあるけれど、それでもやっぱり生きていかないといけないし、生きていきたいと思いました」(女性)

「単なる歴史映画ではなく、人生の哲学を感じるものだった。世の中、今も昔も “矛盾”だらけ。その中で、色々な立場、考え方を持つ人々が生きている。今よりもずっとずっと矛盾が多かった時代に焦点を当て、様々な人生模様を描き出した良作だと思う」(41歳 男性)

「『争いから逃げ出す』という選択肢が、とても現代的で、そしてそれも正しい、人間らしい決断だなと感動しました。生きるための選択肢について考えさせられました」(30歳 男性)

「一揆を起こした側、山中から逃げた側の苦悩を感じられた。残された側も、それでも生きていかなければならない。生きていく苦労や強さを感じた」(42歳 女性)

「今の生活に感謝し、昔の人の苦労を思い、考える事色々有り。これからの生活、新しい気持で生活します」(86歳 女性)

「歴史の断片を民衆の立場、さまざまな立場からの掘り下げ方がおもしろく、現在へ続けられている見方がよかった」(66歳 男性)

「その時代時代を精一杯生きてきた人達が居る。そして今の私達に生命をつないでいてくれる。一揆は一見失敗に思えるけど、その行動があって今があると思わせてくれました。先人達にありがとうを言いたい」(女性)

「愛をすごく感じました。まだ子供が小さいので(7歳、5歳、2歳)、もう少し大きくなったら子供達と一緒に見たいです。すごく良かった!映像から音楽から役者さんまでパーフェクト!私もがんばろ!日々のくらしを愛をもって」(33歳 女性)

「(「すごく良かった」に○をして)じへいのぼうけんがすごくつらかったんだなと思ったから。またこんどすばらしいえいがを作ってください」(8歳 女性)

「何を選び、どのような覚悟をもって生きるのか? 何が正しいか、正しくないか。それは人によってまったく違う。それでも、人は生き、命は続いていく。でも、できることなら、命の視点を選びたい」(53歳 男性)

「江戸時代も現代も、人は色々な矛盾の中で、それでも精一杯生きている。今日も一日、精一杯生きようと思いました」(53歳 男性)

「山中一揆については、前から関心と興味がありました。蒜山では大森の七左衛門親子や田部のたくさんの人が処刑されるという一揆の最大の犠牲者を出した地です。映像化していただき、ありがとうございました」(82歳 男性)

「治兵衞さんをとおして、強いもの、大きいもの、目に見えるもの…そういう価値ではなく、弱きもの、脆いもの、うつろうもの…次の時代を作る価値(ヒント)が見えました」(53歳 女性)

「名もなき一人が、歴史の中での重要な主人公なのだと感じました」(32歳 女性)

「普段子どもとの関わりの中で、歴史の学習をすることがあります。国を造った有名な人の話はできても、本来その国、地域で生きていた、選択をしてきた人たちがあるから今がある。子どもたちにも伝えていきたいと思いました」(29歳 男性)

「時代ものなのに映像がスタイリッシュで、挿入音楽のジャズっぽいところがとても良く引き込まれました。ラストの舞は迫力があって印象的です。新しき民というタイトルの意味が良くわかりました」(43歳 女性)

「風景がきれい。音楽とのからみが絶妙で良かったです。その時代の人々の感情、複雑な気持ちが伝わってきてしみじみとしました」(33歳 女性)

「歴史を知ったうえで生きる意味を問い直す映画だったと思いました。現在生かされている自分にできることは何があるのか考えさせられました」(60歳 男性)

「忘れられそうな昔のことでも伝えていかなければいけない大事なこと。これからももっともっとこういう後世に伝えるべき出来事を映画にして残してほしいと思いました」(31歳 女性)

「理不尽な世の中は今も昔も変わりないけど、物理的に恵まれている現代に生まれたことに感謝…そんなことを思いました」(女性)

「それぞれの立場の人間を、ある方向から断定的に捉えるのではなく、ある程度客観的に捉えているのが印象的だった」(63歳 男性)

「作品の思いはとても伝わったような気がします。私は全く歴史がくわしくないので、す〜と映画の世界に入り、民のすばらしさを、そして愛を学ばせていただき、ありがとうございました」(38歳 女性)

「人の気持ち、考え方の移ろいが表現されていて考えさせられた。多くの人の努力によって1本の映画ができあがっていく過程を含めて感謝です」(27歳 女性)

「自分と重なる感覚があり、映画の中に入り込んでしまいました。時代劇なのにリアルに感じる不思議な映画です」(40歳 女性)

「麦をまく風景は季節がら共感できた。やっている人間は共感できる部分が多い」(43歳 男性)

「すごく良かった。何があっても『生きて』いれば何でもできると思えたから。とてもたくましい映画だと思った。“土”という言葉が浮かんだ」(30歳 女性)

「『遠くの誰かが死ぬのが、生きるためには仕方ねえってか』という言葉を大切にしたい。過去と未来、足元と見えない土地のつながりに想像力を働かせることの大切さを感じた」(28歳 男性)

「前作『ひかりのおと』と同様に、時代に抗うことなく、時代を否定することなく、肯定的に受け入れてこそ始まる人生観を監督の作品性の中に感じます」(55歳 男性)

「新六のような支配に抗う強さは華々しく描かれることが多いですが、逃げること、生きること、それでいいじゃないかという精神が『許された』気もして、難しいことを考えなくてもいいんだと感じました」(27歳 男性)

「映画がたくさんの人との関わりがあって出来るのだなあとエンドロールを見て感じました。物語の流れ、役者さん、とてもピッタリで、音楽も役者さんの心がつたわるなあと観ながら思いました」(46歳 女性)

「足元のこと、感覚を、極限までスケールを大きく表現してくれていると感じました。ずっとすべての場面にひきこまれて観ていました。なのに、ドラマとしてひきこまれたというのでもない。じっくり思いめぐらします」(40歳 女性)

「映画ってこんなにすばらしいものだったかと再認識させられた作品。中に中に引き込まれていく作品でした。とにかくすばらしい」(71歳 男性)

「生きる事を真剣に考え、苛酷な環境にたえて来た民族が大部分だった時代を考えさせてもらいました。今は生命を粗末にし、何でも人に要求する事に馴れた事、天災も含め、生きる事をもっともっと本気で取り組みたいと思いました」(84歳 女性)


「いろいろと考えさせられる映画でした。治兵衛が逃げるかとどまるかまようところは、ほんとうに自分もまよいました。どっちをとっても一生まよいがついてまわる。そんな人生の転機はだれにでもあることだと思いました」(56歳 女性)

「私自身も『きんきらきん』を『きんきらきん』と言える人になりたいし、素直でありたい」(37歳 男性)

「人の葛藤、掴みがたい心がよく描かれていた。特に心の根っこが人のエネルギー、パワーとして生き続けること。そして覚悟がさらにそれらをupさせてくれることを感じました」(63歳 男性)

「治兵衛を決して英雄として描くのではなく、むしろ誰よりも弱い存在(何ものでもない存在)がまさに“新しき民”として生き残る。受け継がれる。象の仮面や眼帯、回転舞台が彼を自身も気付かぬうちに“新しき民”へと変貌させるのだ」(22歳 男性)

「現在の世の中にもある問題と通ずるものがあった。苦しくてもやり直そう、前を向こうという気持ちを強く感じました」(40歳 男性)

「自分の中では何だかまだ胸がザワザワしています。当時の人たちの心情も理解でき、自分が今から一歩前に進むことができそうな気持ちになりました」(66歳 女性)

「何かおかしいと思ってもはじめに声を上げることは勇気がいること。初めにおどり出す人になることを考えさせられました」(36歳 女性)